図書館にかかわるヒトが織りなすシゴト

10月も折り返しを迎え、夜長にきこえてくる虫の音に秋の風情を感じる頃となりました。コーヒー片手にゆっくり本が読みたくなる季節ですが、このところ改修作業にいとまがない男木島図書館です。年内オープンを目論み日夜作業に励むわたしたちの奮闘記、とくとご覧くださいませ。なお、今回で今年5月から始まった改修レポートが10回目に至ったことを記念(すべきか否かはまたの機会に考えると)して、いつもとはちょっぴり違った文体でお送りさせていただきます。

 

架空と実在のはざまの物語|北側屋根との戦い

 

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(i)建築部隊長・大和が見つめる先にその敵はいた。家全体の佇まいのせいなのか、静かに横たわる無垢な野地板がどこか異質な様を呈しているようにも見える北側屋根。 「このままの姿でずっといられると思うなよ」 大和が放った一言に、未完成屋根との仁義ある戦いの火蓋が切られた。

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(ii)「純粋無垢なのは良いことだけど、今のままじゃあまりに打たれ弱い。自分を多少装ってでも強くならないとダメだ!」 そう言って大和が最初に取り出した武器は、黄色く彩られた耐水用合板。棟梁も参戦して、建築部隊が優位を保ったままの攻撃が続いた。

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(iii)結果、建築部隊の術中に陥った野地板はみるみるうちに見る影を失い、耐水用合板で一面を覆われてしまった。抗戦する間もないまま、合板と合板の継ぎ目にシリコンを流し込まれ、身動きすら取れなくなった未完成屋根。「足場が悪いとこれ以上作業もできないでしょう!」と合板の表面にあちこち木くずを散りばめて精一杯の抵抗を図ろうとするが、虚しくも建築部隊門下生・守屋に「全部吹き飛ばしちゃえば怖くないわよ!」とブロアで華麗に一掃されてしまう。

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(iv)おのれの行く末に暗雲が立ち込み始めた未完成屋根、皮肉なことにその表層にも暗色の下地材が打ち付けられていく。「闇を知らなければ光を感じることはできないのよ、知ってた?」そう諭すようにしながら、軽量性・耐久性をともに備えた横一文字葺き仕様の屋根材を最終兵器に携えて未完成屋根の前に姿を現したのは、男木島図書館総指揮官・順子。「この戦いもそろそろ終わりにしましょう」彼女が呟いた一言は、屋根材を固定するために釘を打ち込む音を前にかき消された。

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(v)その後は早かった。建築部隊がこぞって屋根葺きに取り掛かったのだ。「自分を守れない者が他者を守ることはできない。これは僕らだけが望んだ姿じゃない、君も望んだ姿なんだ」大和が最後に放ったこのひと付きで「未」という頭文字が砕け落ち、北側屋根は「完成屋根」となった。

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(v)日暮れとともに戦いは終結した。屋根はもう何も言わなくなっていた—戦いの前がそうであったように、静かに横たわっているだけだ。ただ、夕日に照らされた様は以前と異なり荘厳として誇りに満ちているように見えるのだった。〈完〉

 

「匠」紹介|大改修!!劇的ハーフウェイスルー

 

笑いあり、苦難ありの図書館大改修ドキュメンタリー「ハーフウェイスルー」

老朽化した古民家にあらたな命を吹き込み、図書館として再生させようと試み続ける「匠」たちがいます。

 

(i)棟梁:稲塚和正(いなづか かずまさ)

 

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(i-i)男木島出身。潜りの漁師としてバリバリ現役で活躍する傍ら、棟梁として現場のかじ取りを行っている。本人曰く大工仕事は「趣味の延長」なのだそうだが、棟梁の知識と技術に触れた者はみな一様に「信じられない」と口にするほど。求める正確さと紳士で真摯な性格には、仏ですら顔負けするだろう。

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(i-ii)棟梁がいまメインで進めているのは、一階西側・書庫スペースにあたる壁面全般の作業だ。図書館の要と言える本棚づくりから外壁の施工まで、粛粛と行っている。「金具は基本的にどうしても必要なところにしか使わんようにと思いよる。このこだわりがなかったらもっと早く仕事できよんかもしれんのやけど(笑)」と言いながら、寸法を測って切り出した棚板を一枚一枚丁寧かつ着実にはめ込んでいく姿には敬意を払わずにはいられない。

 

(ii)建築部隊長:福井大和(ふくい やまと)

 

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(ii-i)男木島出身。建築部隊長としてこれまで数々の難場面を牽引してきた。棟梁に引けを取らぬ技術と頼もしい背中に、周囲から大工仕事を生業としているのかと勘違いされることもしばしばだが、本業は何を隠そう、ふしぎなほどに気取りのないIT会社の社長さんである。この頃は写真のバックに写るはめ殺しの窓、本棚の機能を兼ね備えた壁をほぼほぼ一人の力でおさめたことから、「建具まわりのスペシャリスト」との呼び声が高まっている。

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(ii-ii)「建具まわりのスペシャリスト」の挑戦は現在も続いている。外に向かってぽっかりと大きく口を開けている書庫スペース北側の一角が次なる舞台だ。実際に手を動かす前にイメージをある程度固めるのが彼の流儀。ここでも「だいたいこんな感じか」と頭の中の図面を更新することを忘れない。この四角いガラス戸は、彼が幼い頃に学んだ旧校舎を解体するときにもらってきたものだ。彼があらたな命を吹き込むことになるだろうこの窓が、これからどんな風を招き入れてくれるのか楽しみである。

 

(iii)総指揮官:福井順子(ふくい じゅんこ)

 

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(iii-i)福島県出身。学生時代に夫・大和さんと出会った大阪で長く過ごしていたが、約一年半前に娘さんも三人で島に暮らしの拠点を移した。移住当初から本業のWeb関連の仕事と両立しながら、図書館をつくるために奔走。己の夢を実現させるという熱意と周囲への気配りに常に溢れている彼女の人柄が、図書館の今後の行方を明るく照らしている。現場で作業するときは塗り物を担うことが多い。

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(iii-ii)取材や来訪客の対応をするのも彼女が役目としていることの一つだ。とある日、授業で見学に来ていた小学生の男の子が玄関先に散り積もっているおがくずが昆虫を飼うときに使える代物だということを知って「持って帰ります!」と言い出したときも、すかさず袋を用意して優しく接していた。彼女が目指すすべての人にひらかれた公共な場づくりは、彼女のようなおおらかさと誰とも対等にかかわる人間性があって初めて実現されるものなのかもしれない。

 

(iv)図書係兼DIYer:齊藤美紀(さいとう みき)

 

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兵庫県出身。通称ミッキー。男木が好きという単純な理由で、約半年前に関西から移住してきたIターン女子である。図書係としてこの改修レポートの更新を任されている。改修にあたってはこれといった得意分野がない代わりに、幅広い作業をそつなくこなすDIYer。直近だと外壁の土壁が崩れ落ちた部分に、漆喰と剥がれ落ちた土を混ぜて練り合わせたものを手で押し込むようにして補修を行った。

 

(v)宮大工:松下和正(まつした かずまさ)

 

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香川県出身、男木島にルーツがある。農をこよなく愛し、持ち前のユーモアセンスと若さ、そして棟梁の一番弟子として授かった宮大工の称号のもと、快進撃を続けている。中でも、柱や梁など家の基礎をなす重要な構造体の細工はお手の物。過去に釘やビスで止めずに木材を接合するためのほぞ・ほぞ穴を掘る工程では苦行を強いられる場面もあったが、七転び八起きで見事やり通し、己の成長の糧とした。近頃は「側面担当」を仰せつかさり、屋根まわりの補修・補強や外壁面への合板打ちつけ等で活躍している。

 

(vi)破壊王:橋本一将(はしもと かずまさ)

 

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岡山県出身。漁師兼アーティストという異色の肩書きに加え、破壊王=デストロイヤーの異名をもつ。本人曰く、彼が触れたものは意図的に「壊した」のではなく勝手に「壊れた」というのが正確な表現になるらしい。現在は一階ギャラリースペースと裏庭をつなぐ出入り口横に装飾のために埋め込むガラスの細工に尽力している。使用するガラスは古建具を自ら解体して、必要に応じてサイズ加工したものだ。破壊からの創造という壮大な世界観が彼の手によって表現される日は、もうすぐそこまで来ている。

 

 

…and more.

To be continued…?

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