はって はつって はめて はらはら

島で暮らしていると、季節の移り変わりを身近なところから感じることができます。たとえば「畑で採れたからやるわ。食べまい」とおすそ分けしていただくものがやみかんや大根になったり、島内であちこち見かける猫が冬毛仕様でもふもふになっていたり。ほかには、夏場には最終便のフェリーが到着するまで明るかった空に、日が短くなったこの頃は夕方五時過ぎには星が散らつきはじめたり。現在半屋外空間の男木島図書館では、改修作業後にそんな空を見上げながらホットドリンク片手にひと息つく時間がひそかな楽しみになっていたりなんかして。

男木島の夕暮れ

時の流れはおそろしく早いもので、すでに迎えた十二月。「男木島便り」での進捗報告がすっかり滞っておりましたことをお詫びするとともに、空白期と化している先月の作業模様をかいつまみながら明らかにしていきたいと思います。

 

〈はって〉

■一階外壁

北側は余った野地板を使って一面化粧していきました。汚れが付きにくいようにするために一枚一枚丁寧に磨いてから、オイルステインを塗りつけ、いざ大和張りに挑戦。この大和張り、建築部隊長の大和さんが考案された手法で…という訳ではなく、日本で古来より用いられていた板の継ぎ方で、板を一枚おきにズラして少し重ねて張る方法のこと。張り方自体はとても簡単なのですが、凸凹と立体的な仕上がりがいい味を出してくれます。

一人は寸法を出して罫書き、一人は引かれた罫線にそって野地板を丸ノコでカットし、一人は野地板を受け取り釘打ち機でバシュバシュとテンポよく打つ。この見事な連携プレーによって、北側外壁はさほど時間をとられることなく完成しました。

北側外壁

北側外壁、施工途中の様子。理事長自ら「一打入魂!」と釘打ちしています。

難所だったのはところ変わって西側。こちらは男木の民家に散見される焼杉で一面化粧することに。壁面は高さ約三メートル、そこに長モノの焼杉を水平垂直かつ隙間のないように位置を決めて打ち付けていくのは至難の技でした。何といっても、壁面上部に釘を打ち付けようと思ったら足場をのぼって高所で作業をしなければならなかったことがその最大の理由です。だれも怪我をすることなく無事に張り終えることはできたのですが、焼杉を取り付けるために水平に渡してあった胴縁のラインを途中で見失ってしまったために、ポイントを外しまくって一箇所に三つや四つも釘を乱費してしまうというささやかな事件はありました。くれぐれもご来館いただいた際に、西側外壁での粗探しはご遠慮下さいますようお願い申し上げます(笑)。

焼杉

「こんぐらいの間隔で行こうか」と釘で打つ前に焼杉をざっと並べて完成イメージを共有。

〈はつって〉

■外構工事(排水工事、舗装工事)

外壁に続いては、外構工事です。排水用の溝の確保と地面の舗装がおもな作業内容となります。

排水用の溝は、実は以前にひと通り掘り終えていたのですが、作業を進める過程で当初想定していたよりもさらに深く掘り下げる必要があることが発覚したことと、悲しくも人の手の入っていなかった数ヶ月間に土砂や草にのみ込まれてしまったことにより、再度手直しを迫られたのでした。建築の専門家や職人さんが現場におらず、すべての作業をセルフリノベーションで行っている男木島図書館では、このように行ったり来たりをくり返すこともしばしば。決して効率が良いとは言えませんが、思わぬメリットが出てくることもあります。「どんなメリットがあるんですか」という声が聞こえてきそうなので、地面の舗装における実例を挙げておきましょう。

 

メリット①女子にも男子に負けない力強さが手に入る

舗装工事の第一段階として、しっかりと締め固まった地盤を確保するために、まずは既存のコンクリートをハンマーでぶち壊したりノミで削り取ったりする「はつる」作業と、土を突き固めていく作業を行いました。どちらも力のいる作業ですが、男性陣に引けを取らぬ勢いで活躍したのが女性陣。最初のうちは男性陣が建築担当、女性陣が掃除や染物・塗り物などの軽作業担当というように自然と役割が分かれていたのですが、建築部隊の人手が足りない時に女性陣がサポートに入るようになると彼女らのめざましい侵出があり、いまでは女子自ら力仕事を買って出たり工具片手に建材相手に作業したりする場面が見られるのは珍しいことではなくなりました。同じ持ち場に女子がいるということで、もしかすると男性陣の士気も以前より上がっていたりするのでしょうか…?(笑)

北側庭

小学生の女の子ですらコテを見事に使いこなすのだから頼もしい…!

メリット②コンクリートの扱いはお茶の子さいさいに

地面の舗装では、廃棄処分になるような割れて使い物にならない瓦や地中から掘り起こされたレンガをモザイク調に敷きつめた上からコンクリートを流し込んで地盤を固め、小洒落た感じを演出しました。「コンクリートを流し込んで」とさらっと書きましたが、いまの図書館メンバーはコンクリートを練る作業を言葉の通り、さらっとやってのけてしまえるようになっています。というのも、改修作業を始めてまだ間もなかった今年五月頃に一万冊という蔵書の重さに耐えうる強固な支えを設けるために日夜コンクリートと格闘し続けた経験が生きてきたようで、当初は攪拌させる水、砂、生セメントの分量も毎回探り探りで行っていたものの、次第に「こんなもんでいけるでしょう」と感覚で調整が利くようになったのです。「うまくいった」も「これはダメだった」も積み重ねることで学びや成長につながっていくからこそ、セルフリノベーションは楽しくてやめられないのかもしれませんね。

排水工事

週末二日がかりの作業で、排水工事と舗装工事の大枠が完了!

 

〈はめて〉

■文庫本専用本棚

いよいよ図書館らしい作業の模様をこのコーナーではお伝えできそうです…!一階北側の窓の下のスペースを、文庫本専門の本棚へと変身させます。

中央に入っている支柱を基準に等間隔になるように支柱を追加し、その間に板を渡してダボで両者を継いでいきます。全部同じ寸法で支柱や板をはめ込めると楽なのですが、木造家屋のため若干の建物の歪みは付き物。最大で三センチほどのズレが出てくる箇所があったので、板をはめ込むポイントの実測値をすべて叩き出して図面にまとめ、それを見ながら板の切り出しを行っていきました。手間がかかった分、板が一枚、また一枚と入って本棚のかたちに近づいていく度に得られる喜びはひとしおでした。引き続き単行本や雑誌用の本棚作りが待っているので、そちらも頑張ってまいります!

文庫本棚

ここに文庫本がずらりと並んだ風景を目にするのがいまから楽しみです。

 

〈はらはら〉

■屋根工事(一階東・南側、二階部分)

一階東側屋根は、前回のレポートで紹介した一階北側と同様の手法を用いて施工完了しました。後に緑化屋根にすることを目論んでいる一階南側は、その下地作りを進めました。こちらは雨どいの設置や土壌整備など、まだまだ先は長くなりそうです。

緑化屋根下地

緑化屋根の下地作り。空気層を設けるための細木を打ち付けているところ。

二階屋根はもともとの瓦葺き仕様をそのままに、瓦のズレを矯正してひび割れしているところにモルタルを練りつけ補修していきました。補修するには当然屋根の上に登らなくてはならなかったのですが、屋根の上から見下ろすと(ちょっと盛った表現になるかもしれませんが)地上にいる人が手のひらサイズに納まるぐらいに見え、なおかつ油断していると転げ落ちてしまいそうになるくらい勾配が決して緩やかではなかったために、とりたてて高所恐怖症という訳ではない拙者も慣れるまでの間は正直かなり腰が引けた作業となりました(笑)。また、屋根の上に登って作業していた頃はちょうど秋晴れの空が心地よい季節でしたが、これが真夏の炎天下や真冬の極寒にさらされながらの作業になっていたら…と想像すると、あまりに過酷だったのだろうと思います。

補修後の様子を見ていると「雨漏りはこれにて無事解決…?」と語尾のクエスチョンマークを拭いきれない現状ではありますが、手を加える以前よりは遥かに改善傾向にあるのではないかという感じです。「屋根仕事は素人には難しい」と言われる所以がよくよく分かった気がします。

屋根工事

 

■二階外壁

二階外壁は、補修を終えた土壁に漆喰を塗りつけて仕上げていきます。漆喰塗りを主導して下さったのは男木島が誇るイケメン灯台守・清(きよし)さんです。定年を迎えるまで関西を拠点にタイル職人として活躍されていただけあって、その仕事っぷりは無駄がなく洗練されています。手元に注目しているとついつい見とれてしまうのですが、清さんが作業されている足場に目を移すと、思わず目をつぶりたくなるほど。その足場とは、高所に組まれた幅数十センチの板や瓦五枚分ほどしかない屋根の上など、不安定極まりないところ。ご本人曰く「足場が悪いんは平気なんや。腰がぎっくりならんかだけが心配(苦笑)。」ということなので頼りっぱなしで恐縮ですが、おかげさまで全面美しい白塗りの壁に生まれ変わりました。

漆喰塗り

脚立をめいっぱい広げて屋根まで渡して登り、仕事をする清さん(命綱つき)。身のこなしの軽さに驚きです。

さらに、壁面下部に短い板を立ち上げ化粧していきました。立ち上げに使用した板は、もともとは現在建て替え中の男木小中学校旧校舎から廃材として出た木製の床タイルにあらかじめオイルステインを塗りつけ、リメイクしたもの。かつて島の子どもたちの成長を見守り足元から支えた建材が、今度は人々の頭上にところを変えて図書館の装いを引き立たせてくれていると思うと、ちょっぴり不思議な感じもしますね。取り付け作業は現在折り返し目前。安全確保と防寒対策は十分に、後半戦も精を出して取り組んでまいりますよ〜!

 

■開館がいつになるのかという問題

開館を心待ちに、いつもあたたかく応援して下さっている皆さまが揃って気にされているであろう男木島図書館の開館日。今夏に開館日の延期を告知させていただいてから早三ヶ月が経ったいまでも尚、大変申し訳ないことに正式な日程をお伝えできるほどの準備が整っておりません。先月は悪天候が続くなどして思うように作業がはかどらなかったこともあり、現在は計画よりも遅れがちの進捗状況ではありますが、少しでも早くこの場を開けるようにとの想いを抱きながら日々改修に取り組んでいます。まずは某テレビ局で特集を組んで下さった時にオンエアされた「年内プレオープン予定」が実現するかどうか、私たちと一緒に「はらはら」しながら、これからも気長にお付き合いいただけると幸いです(笑)。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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