6月3日に「未来の図書館、はじめませんか?」の著者である岡本真さんをお招きして、「未来の図書館、島の図書館」をテーマとした座談会を男木コミュニティセンターにて開催しました。
岡本さんは現在インターネットの学術利用をテーマにしたメールマガジンを不定期配信されているアカデミック・リソース・ガイドの代表取締役を務められています。ご自身の幅広い知見を活かして図書館業界における図書館づくりのアドバイザーやコンサルタントとしてもご活躍されており、最新号の特集で男木島図書館のことを取り上げていただいている図書館系専門雑誌「LRG-ライブラリー・リソース・ガイド」の発刊にも携わっておられます。
今回の座談会は岡本さんが来島される日時に合わせて平日午後の開催であったにもかかわらず、大変ありがたいことに島外にご在住の方にも多数ご参加いただけました。現在図書館司書としてお勤めの方や、ご自身が経営されているお店で将来的に本にまつわる面白い取り組みが何かできたらと思案中の方など、参加者のみなさまがそれぞれに本や図書館に対して熱心な方ばかりだったこともあり、和やかな雰囲気ながらも岡本さんへの質問の投げかけや参加者同士でのやりとりが盛んに繰り広げられました。
ある参加者の方から「なぜいま離島での図書館の動きに着目されているのですか」という質問がありました。これに対して「離島や中山間地域とよばれる地方は若者の都市部への人口流出や少子高齢化、財政破綻などこれから日本の自治体が直面する事態が次々に起こっている、ある意味で先がけ的な場所です。ですからこうした地域での取り組みがモデルケースとなることがあります」と、岡本さん。
そこで隠岐諸島の西ノ島町(西ノ島)、知夫村(知夫里島)の2町村とともに「島前エリア」と呼ばれている小さな町、海士町(中ノ島)のケースを引き合いに出されながら、岡本さんの話は続きます。
「海士町では島前高校がかつて統廃合の危機にさらされました。高校が島からなくなると15歳以上の若者が島から消えてしまう。そうすると、若者の島への愛着は失われて人口流出に歯止めが効かなくなります。高校の存続はそのまま島の存続に直結していると考えた海士町は、魅力的な学びの場づくり・教育改革を進めていきました。そうして島前高校はいまでは島外からも生徒が集まる進学校へと育ちました。
図書館の動きでいうと、海士町にはかつて図書館がありませんでした。図書館のない島で島民にどう本を提供するかという課題に対して、島の学校や公民館、診療所などの人が集まる場所を「図書分館」と位置づけてネットワーク化を図り、島全体にひとつの図書館としての機能を持たせる「島まるごと図書館」構想を打ち出して整備を進めていきました。
これから全国の各自治体が生き残るために重要なのは、この海士町のように教育・文化への投資に力を入れることです。産業投資をして成功している自治体もありますが、そうした地域では現世代のあとを担う若者が育たない、またはそもそも存在しないといった後継者問題にいずれ直面することになります。その点、教育・文化に力を入れている自治体は「人づくり」の基盤がしっかりと整備されていると言えるのでとてもつよいです。男木島でも昨年度に小・中学校が再開して、いま図書館をつくろうという動きが起こっていますが、これはごく自然で良い流れだと思います。男木島が海士町に続く、全国の足がけ的な存在になっていくのではないでしょうか」
最後に岡本さん(写真左)から思わぬエールの言葉を頂戴し、「そういう場所になったら良いですね〜(笑)」と嬉しくも身の引き締まる思いでした。
このほかにも本を通した場づくりや大学図書館のあり方、図書館における電子書籍の導入と今後の展開などについてさまざまな質疑応答があり、2時間弱という短い時間ではありましたが非常に中身の濃い座談会となったように思います。ご参加いただきましたみなさま、岡本さん、ありがとうございました!
座談会が終了後、男木島発のフェリー最終便が出るまでほんのわずかな時間でしたが「せっかく島に来たので見ておきたい」という参加者のみなさまのご要望により、最後に今夏オープンに向けて絶賛改修中の図書館予定地へそろって視察に行きました。
それぞれに古民家を俯瞰して見たり、実際に中に入ってあちこち隅々まで見渡してみたりと興味津々のご様子でした。想像以上の現状を目の当たりにされて「よくこちらで図書館をしようとご決心されましたね…!」とあっ気にとられた方もいらっしゃいました(笑)
先月は週末に島でのイベントが続いたこともあり、人手を集めての改修作業になかなか着手できなかったので、今月は稼働率を上げて頑張ってまいりたいと思っています。
わたしたちといっしょに汗を流して改修作業に取り組んで下さる心強い仲間を引き続き大募集しておりますので、少しでもご興味のある方はどうぞお気軽にページ下部のフォームよりお問い合わせください。
また、現在本棚設置と500冊分の新本購入のために必要となる資金獲得のためにクラウドファンディングにも挑戦中です。
プロジェクトページの立ち上げから一週間、すでにたくさんの方からあたたかい応援やご支援を賜り胸があつくなる想いでいっぱいです。本当にありがとうございます。
みなさまの思い描く「未来の図書館」を、かたちにできるように—今後も男木島図書館をどうぞよろしくお願いいたします!