みんなでつくる、なんでもつくる 創作の秋

9月に入り、男木島では季節が一気に秋めいて来ました。虫の音が心地よく響く夜は半袖では肌寒いと感じる日が多いほどです。日中も真夏と比べると大分過ごしやすくなり、延長戦に突入している男木島図書館の改修作業は日々着々と進んでいます。今回のレポートでは、8月後半からこのほどまでの様子をお伝えします。

 

■資材調達、搬入

いよいよ床や屋根、壁など内装作業に取りかかっていくのに必要となる資材を高松のホームセンターまで買い出しに行きます。一度にまとめて購入することもできますが、置き場が十分に確保できず進捗状況に合わせて少しずつ買い足しているので、平均すると週2回ほどのペースで出向いては「今日は足場板を40枚!」という具合にまとめ買いをくり返しています。
高松〜男木島間の人と資材の行き来は、ふだん棟梁として改修の手立てを導いてくださっている漁師さんの漁船で行わせいただいています。大量の資材が乗せられた漁船はまるで古き良き時代の木造船のようです。海を滑るようにして漁船を走らせ男木に着港してから図書館までの資材の運搬は、細道で運搬車が入り込めないため人力で行います。飛び入りで手伝ってくださる方がいらっしゃったり、力自慢の男性陣に続けと言わんばかりに女性陣も積極的に運び手となってくださったりと、いつもさまざまな方が力を貸してくださいます。
その昔男木島には「公力(こうりき)」と呼ばれる助け合いがあり、誰かが新しく家を建てるときには島民みんなで木材をかついで運んでいたそうですが、いまも変わらずにそうした精神が自然と根付いているこの島はほんとうに素晴らしく、あたたかいところだと毎度再認識させられます。まだまだ記事の序盤ではありますが、この場をお借りしていつも支えてくださるみなさまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございます!

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■1階西側①:柱の補強、追加

もともとは住居として使われていた家屋を人や本が入っても十二分に耐えうる建物にするために、柱の補強と追加を行いました。
柱の補強はおもに建物の角や中央に位置する既存柱に購入してきた木材を抱き合わせてボルトで締め上げるようにして固め、その後もとより柱のあった間あいだに寸法を合わせてカットした木材をあらたな柱として追加していきました。このときに苦労したのが木材の細工です。とくにあらたな柱となる木材にほぞを、柱を当て込む梁にほぞ穴を彫るという作業では、たった1mm寸法が違っただけで両者をうまく接合できなかったり建物に対して垂直や水平がうまく取れなかったりしてしまうので、非常に細かな微調整が求められました。男木島図書館のムードメーカーでお馴染み「山のかずまさ」くんは、そうした細工に丸ノコやノミと己の感覚を駆使して挑み、果敢に失敗と成功を重ね続けた結果、棟梁より宮大工のお墨付きをいただくまでに成長していました。こうして何でも自分でやってみることで、島の若者の自給力は日々高められているのかもしれませんね。

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■1階西側②:梁補強

柱と同様、梁もより強固にするために、既存梁の表裏それぞれに天然材よりも強度の高い集成材を当てがい、両者をボルトで締め上げ補強しました。使用した集成材は長さ4m。その分重さもかなりの重量級ということもあり、棟梁からお声のかかった精鋭男性陣が集結。寸法合わせや位置の調整のために何度も集成材の上げ下げをくり返し、さすがの彼らも作業が終わるころには少々お疲れ気味の様子でした。
図書館は本来もう少し文化的な場所であるはずなのですが、現状もっぱら体育的であるという点に関してはわたしたちも意図していない結果であるということをここで明言しておきます(笑)

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■1階西側③:根太打ち

柱と梁を固めたところで、今度は家屋の土台となる床張りの準備を進めていきます。過去に自分たちの手でコの字に打設したコンクリートに根太(床板の支えのために、床下にわたす横木)となる木材を打っていくのですが、コンクリートの最大高低差は驚異の10cmを記録、各所でゆるやかな傾斜を描いてしまっているため、安直にコンクリートの上にポン置きで根太を打ち付けてしまえば床が傾き放題となってしまいます。水平をきちんと確保するには柱を細工したときと同じような緻密な宮大工仕事をこなせばならず、根気のいる工程でしたが、妥協を許さぬ試行錯誤の末に数日間かけて根太打ちを完遂させることができました。
ちなみに、打設した根太は念には念をと、図面に描かれている寸法の倍の太さの木材を採用。根太の両端にはアンカーボルトをコンクリートに埋め込んで、床束を随所に据えています。これで10,000冊の本が所蔵されても底が抜け落ちることはまずないでしょう…!間もなくこの場所は土間から板間に変貌を遂げる予定です。

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■1階東側①:床剥がし、土均し

1階西側の土台がある程度かたちになってきたところで、これまでほぼ手付かずの状態にあった東側の改修にも着手し始めました。資材や道具の置き場と化していたところを整理整頓し、まずは床板を順番に剥いでいきました。
床下からは数十年前の飲料水の空き瓶やプルタブなどが多数出てきて「昔はこんなんやったな〜」と懐かしむ人もいれば「ファンタが瓶に入ってた時代があったんですね!」と未知との遭遇を果たした人もいて、ジェネレーションギャップをまざまざと感じる瞬間がありました。階段まわりに積んであった石やありとあらゆる建具、床構造も取り除いて凸凹になっていた土を平らに均すと驚くほどスッキリと開けた空間に。今後はこちらの方でも早速根太打ちに取りかかっていけそうです。

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■1階東側②:壁打ち

これまでの作業で素人ながらに大工仕事に磨きのかかってきた図書館メンバー一同。柱、梁、床構造に次いで挑戦するのは壁打ちです。その記念すべき最初の施工場所に選ばれたのはギャラリースペースとなる予定の一角。下地となる構造用合板を壁の寸法に合わせて罫書いて丸ノコでカットし、釘やビスで打ち付けていきます。カットしたパーツはまるで巨大なパズルのようで隙間なくぴったりはまると非常に気持ちが良く、何より風合いはあってもいかにも脆そうな土壁から堅強な構造用合板で一面が覆われるだけで「嗚呼、壁ができた…!」とものすごい達成感と感動に浸ってしまいます。
つくったものがはっきりと目に見える形になっていく喜びこそ、セルフリノベーションの醍醐味のひとつなのだと思います。

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■屋外:屋根張り

家屋内の改修作業と並行して、1階の軒にあたる屋根部分を緑化屋根にすべく既存の瓦を下ろして屋根の下地づくりを進めています。垂木は痛みがそれほどひどくなかったので古いものをそのまま残し、野地板をあたらしいものに置き換えて敷き詰めていきます。この一ヶ月ほどあまり天候が優れなかったため仕上げまでなかなかこぎ着けていませんが、細工の難易度が最も高いであろう抜け落ちていた東側両端の隅木を棟梁と宮大工のご活躍あって無事復刻させることができている上に、防水シートを仮止めするところまで作業が進んでいるので「屋根のしまい、あとは早いんちゃうかな〜」と不思議と強気になっていたりします。
緑化屋根について、植栽全般をお願いしている小豆島ご在住のpensée店主・西脇さんとの打ち合わせもゆるゆると進行中ですので、乞うご期待ください!

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■2階:漆喰塗り

先述した1階の壁打ちは現在も進行中ですが、2階の内壁はある程度形になってきています。粉末漆喰と水を練り上げて、補修の済んだ土壁に塗り付けていきました。
「漆喰塗りは何よりスピード命だよ」そう教えてくださったのは、ちょうど漆喰塗りを始めたころに別件で来島されていた建築家・安部良さん。「ちまちま慎重に塗るんじゃなくて、ある程度飛び散っても気にせずに大胆にやるのがいいよ。手先でコテを操るんじゃなくて、肘を伸ばしてストロークを大きくするイメージかな。そうすると左官屋さんみたいにムラなく薄塗りできちゃうんだよね〜」そう言いながら、2時間ほどの間におひとりで4面ほど塗り進めてくださいました。棟梁に2階隊長に任命された私は当初2時間かけて1面完成させるのがやっとのペースでしたが、安部さんの動きをお手本にして作業を続けるうちにみるみるスピード、仕上がりともに向上していき、雨漏り箇所2面をのぞく内壁をボランティアさん方にもお手伝いしていただきながら塗り終えることができました。
白く塗り固められた壁が窓から差し込む光を反射して、これまで薄暗い印象だった空間が、電気が通っていなくても自然の灯りがやわらかく明るい空間にさま変わりを果たしました。ここで寝そべりながら本を読めたらさぞかし気持ちが良いことでしょうね。そんな情景を夢見ながら、男木島図書館の改修作業はまだまだ続きます。

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シルバーウィークの5日間、わたしたちと一緒に改修作業をお手伝いしてくださるボランティアさんを募集します。お願いする作業は進捗状況に合わせて若干の変更があるかもしれませんが、おもに床張りや壁打ち、本棚塗りなど楽しい作業を予定しております。参加を希望される方やご興味のある方は下記のボランティア申込みフォームまたはFacebook公式ページからどうぞお気軽にお問い合わせくださいね。

 

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