あけましておめでとうございます。
今年1月は12日からの開館予定です。その12日には男木島「歌会」をします。
お隣の大島で詠まれた句を始め、小豆島に晩年住んだ尾崎放哉、愛媛県松山市出身の高浜虚子や河東碧梧桐と、瀬戸内は句と縁が深いように感じています。
そういった瀬戸内と句の歴史を紐解いてみるのも面白いし、詠むのがちょっと恥ずかしいなという方へは紹介をしたりできたらなと思うし、もちろん句を詠んでもみたいしという、小豆島の迷路のまちの本屋さん店主の中田幸乃ちゃんをお迎えしての小さな集いです。
(俳句じゃなくて短歌でも、なんなら詩でも良いですという気持ちを込めて、句会じゃなく歌会と言ってみてます)
さて。男木島図書館は、昨年たくさんの方の力をお借りして、無事開館することができ、そしてやっぱりたくさんの方の力を借りて運営をすることができました。深く深く感謝しております。
ひとつの例でいうと、昨年の男木島図書館欲しい本リストからの贈り本は300冊です。
この贈り本にどれだけ図書館の運営が助けられているか、島の人たちの「ここに来るとちゃんと新しい本があるねえ」と喜んでくれている言葉を本を贈ってくださった皆さまにいつも届けたい気持ちでいます。
また運営の内部のことではありますが、図書係として入ってくれているミッキー、助っ人のゆうこさんとゆみちゃん。10月には「老人と海」を作るのに尽力してくださった建築部隊のみんな(NPO法人男木島生活研究所のみんな、稲塚棟梁、西川一家、山口一家、ダモンテ商会さん、清兄やん、松下家のお二人、ジャンさん、ダビッド、ウルリッヒ)、そして老人と海でカフェ営業をしていたダモンテ商会のお二人、何かと遊びに来てくれる島のみんな、ふらりと見つけて訪れてくれる島外の方々、男木島図書館をめがけて来てくれる皆さん、図書館展示をしてくれたり、図書館で音楽を奏でたり、朗読をしてくれたり、珈琲を淹れてくれたり、キャンドルを灯してくれたり、の皆さん。
あなたのおかげで、図書館はここに在ります。
「たくさん」と言えば、瀬戸内国際芸術祭があったこともあり、たくさんのメディアでも男木島図書館を取り上げていただきました。年始のNHK日曜美術館の40周年特別番組「ゆく美 くる美」でも取材いただいていました。
こうして皆さんに知っていただく機会を得ていること、とても嬉しくありがたく思っています。
その上での2017年ですが、「消費されない場所になる」ということを一つ抱負としてあげます。
私たちは男木島に「図書館」という場所を作りました。
先にも書いたように、それはたくさんのメディアに取り上げられ、知っていただくことができました。
瀬戸内国際芸術祭もあり、多くの方に訪れていただくこともできました。
図書館をきっかけにした移住者も生まれ、島の方たちも日常的に遊びに来てくれる人、本が行き交う場所として来てくれる人、コーヒーを飲みに来てくれる人、学校帰りにちょっと寄り道、と、それぞれの男木島図書館の形が少しずつ出来てきているように感じて、とても嬉しい日々を送っています。
しかし、まだ「図書館という場所はハードルが高い」という人もいることも同時に感じています。
そのハードルが高いというような感じを払拭していくには、特別な薬のような解決法はなくて、訪れる人が多い日も訪れる人が少ない日も変わらずに開け続けることがまず大切なのではとないかと考えています。
そもそも私たちは特別なことをしたいわけではなく、特別に思われたいわけではなく、島に本があるということが自然になったらいいな、と図書館を作りました。
図書館ができることで、本を読む人読まない人のヒエラルキーができることも嫌っています。ただ、自然にここにあること。
その「自然」が一番「消費される」ことから遠いのではないでしょうか。
「責難は成事にあらず」という、小野不由美さんの「華胥の幽夢」に出てくる言葉を、何か新しいことをしようとする時いつも頭に浮かべます。
人は誰かのしてきたことを見て批判したり、失敗(もしくは気に食わないこと)に対してこうはしないと考えがちです。
でも、何かを成そうとする時、考えるのは「こうはしない」より、「こうしたい」「こうするといい」の方が良い、と思うのです。
そしてそれは誰かと自分を比べることはない、ということにも通じます。
成功者とも、比べなくて良い。
比較して考えるということは、消費されるということに繋がります。
「あっちの方が良い、だからこっちはいらない。」
その競争は、時には良い効果を生むこともあるでしょう。
でも、私たちが作ろうとしているのはそうではないものです。
私たちも誰かに対して比較をしたくないと思っています。本を読む人も、読まない人も、平等です。
図書館という本のある場所がそんな風に言うのはおかしいと感じられるかもしれませんが、本を読む読まないどちらが良いというわけではなく、本を読む人が少し「近い」けれど、遠い人にも訪れてもらえたら嬉しいし、そのために工夫をしていけたらな、と思うだけなのです。
こんな想いで、私たちは消費される場所ではなく、消費されない場所を作りたい。
そう2017年の最初に言葉を置きます。
今図書館を好きでいてくれている人のためには、もっと居心地良い場所となるために、今まだ図書館がちょっと遠い人のためには近くなるために、少しずつ工夫をしていく。
まずその根底に、訪れる人が多い日も訪れる人が少ない日も変わらずに開け続ける。
男木島図書館は、まだ1歳にも満たない赤ちゃんです。
これからも健やかに男木島に在れるよう、愛情をかけて育てていきたいと思っています。
今これを読んでくださっている皆さまのご多幸をお祈りしつつ。
長くなりましたが、年始に寄せて。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
特定非営利活動法人男木島図書館
理事長
額賀順子
今年もまた新しい一年が始まっていますね~
図書館がいつもそこにあって、そこに行って好きな本を一冊見つけて、
本の中に入っている自分がいました。
そんな風にして過ごしてこれたことを、ありがたく思っています。
どんな人にも、本は待っていてくれます。
どんな時でも、本は優しいです。