年始に寄せて「消費されない場所になる」

あけましておめでとうございます。
年始のご挨拶をここに書くのも5回目となりました。

昨年12月の半ばから、島外向け開館のお休みをいただいています。我儘をごめんなさいと申し訳なく思う気持ちと同時に、関係なく遊びに来てくれる島の子どもや大人たちに私の方が癒されていたりします。

3年前の年始に寄せてで、私は「消費されない場所になる」という言葉を出しました。この時には、多くの取材を受けたりする中で擦り減らないこと、飽きられないことを考えていました。

3年経った今、もう一度この言葉を掲げます。

もう一度この言葉を掲げたくなったのは、なんのためにこの小さな私設図書館を続けているのか立ち戻る時のように感じているからです。

2019年はとにかく忙しい年でした。3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭があり、多くの人が男木島を訪れてくれました。2010年から始まった瀬戸内国際芸術祭は「光」です。芸術祭という名前にふさわしく、それはお祭りで。強い光が当たることによって、同時に影を色濃く見せます。それは決して悪いことではありません。

茹で蛙になって課題に気づかぬままゆっくりと死んでいくわけではなく、色濃い影に気づくことができるからこそ、地域の課題が見え対策を考えることができます。

実際2010年の瀬戸内国際芸術祭、2013年の瀬戸内国際芸術祭を経て、地域の過疎化と衰退を身を以て感じることができ、結果として移住、そして男木小中学校の再開、この男木島図書館の開館へも至りました。

2019年、私が感じたのは「観光地としての島」の在り方それと相対するようにしてある「島の暮らし」という課題でした。オーバーツーリズムという言葉を良く聞くようになりましたが、同じような状況が瀬戸内国際芸術祭の時のみ島に訪れます。
観光のお客さんが増えることは「島を知ってくれる人が増える」という意味では喜ばしいことですが、実際の受け入れが追いついていない部分があります。図書館へのたくさんの観光の方がいらっしゃいましたが、その方たちが「男木島図書館」という空間を本当に楽しむことができたか、心配です。どんな中でも本を読む方はいらっしゃるし、楽しまれる方がいるのもわかっています。しかし、できれば多くの来られた方に満足して帰っていただけたらとも思うのです。

ただ、そこで運営方針とは大きな矛盾が出てしまいます。私たちは正直に言って「おもてなし」をしようとは思っていません。島の人のために「ここにある」ということ「続ける」ということが重要だと思っているからです。だけど、どうしても島を訪れるという特別な体験をされている方の中には、私たちとお喋りをしたかったり、もっとサービス(もしくはホスピタリティと呼ばれるもの)を求める方がいらっしゃいます。

そんな中で私たちがどう在るべきか。それが課題となって見えてきました。

今年はゆっくりとその課題と向き合おうと思っています。「島外向け開館」なんて言葉で区分けをしたのも初めてのことです。
「オーバーツーリズム」という言葉で括って、批判するのは簡単なことです。しかしそこから受けている恩恵が大きいのも事実。それならば、一つ一つ解体して取り組んでいく。それが男木島図書館らしさのように思います。課題を解決していくための仕組みを作ったり生活デザインをする。
そう思うとワクワクしてきませんか?
持続するための変化を楽しむということで、色々と実験的なこともしていけたらと考えています。

昨年もたくさんの人が本を贈ってくださいました。そういえば図書館の在り方に悩んでいるときに「男木島図書館は在るだけで、それがホスピタリティだと思います」と言ってくださった方もいました。
そして男木島図書館で働いてくれているみんな。あなたたちなくては男木島図書館はありません。
ありがとうございます。心からのお礼を。

多くのあたたかい人たちに支えられて男木島図書館がここに在ることは、今年も変わりません。
続けていくための挑戦を、どうぞ見守っていただけたら嬉しいです。

少し年明けから時間が経ってしまったけど。今年の「年始に寄せて」でした。

NPO法人男木島図書館 理事長 額賀順子

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