年始に寄せて「誠実であること」

男木島図書館では2017年の暮れから2018年の年明けにかけて、12月31日も1月1日も開館しました。ぐるっと見渡してみると、世の流れは年末年始ぐらいゆっくり休みましょうとなって来ていて、男木島図書館のこの決定はその流れには逆らっているみたいです。

 

と、言いながらも私も、しっかり休みましょうの流れには賛成です。

 

うーん、でも、年末年始は開けたかったのです。何故かというとまず理由一つめは年末年始は島を離れている島出身の人たちが帰ってくることが多いこと。そういう人たちがちょっと行ける場所があるといいなと。これは緩く理由二つめにもなるのですが、31日1日はさすがに島内他に開いている施設が少ないこと。そして三つめ。休める時だからこそ本を借りたいという人がいるんじゃないかなと思ったこと。

 

総じて見ると、島の環境、図書館としてできることを考えた結果、「こうしたい」というところに落ち着いたという感じです。
これは働いている人が少ない私設図書館だからできることでしょう。

 

男木島図書館 西川家

 

2018年、男木島図書館をどう運営していくか、と思った時に、この年末年始の決断のように「島のこと」「図書館として」ということに軸を置いて、動いていくのではないかな、となりました。
昨年、こちらにも書いたのですが「消費されない場所になる」ということを抱負としてあげました。その時は強い気持ちでこうしていこう、と決めました。

 

でも今年は、もう少し肩の力が抜けています。

 

その上で思うのは“普通は”とか、“世間は”とか、“みんなは”とか、そういったことに動かされるのではなく、自分たちにもっと軸足を置こうということです。人口170人の島。私設図書館。これはきっとある程度特殊な状況かと思います。それなのに「世間は」というようなことを気にし始めてしまうと、ちょっとずれてしまいかねないと思うのです。

 

私の悪い癖で(そうは見えないかもしれないけれど)、小心者で、人の目を気にします。それは物事に対して慎重にあたるという側面も持っていて、良い方向に動くこともあります。でも同時に石橋を叩いて叩き壊しかねない、もしくは石橋を叩く前に周りを見て、こんなところで橋を叩いてる人いないし変だよね、と勝手に気にして去ってしまう、そんな部分もあるのです。

 

男木島図書館は今年で開館して3年目を迎えます。挑戦すること、継続すること、色々と選択しなければならない場面も出てくるだろうな、と感じています。そこで何を根っこにするか、というところを「島のこと」「図書館として」に持ちたいと思いました。それは、私たちの活動にとって「誠実である」ということにも繋がります。

私たちはNPO法人で運営していますが、公共の図書館に比べるとバックグラウンドはとても薄いと言わざるを得ません。でも図書館として信頼でき、安心できる場所でありたい。そう考えると、必要なのは自らが誠実であることが大切なのではないか。

 

誠実な図書館、ってなんか変な響きですね。当たり前のこと、なのかもしれません。
だけど、自分たちの決断や選択を誰かの評価に委ねずに、島のことと図書館としてということに根っこを持って動くというのは、今の私たちにできる誠実さの基準になるのではと考えています。
誠実というと大仰になってしまう気もするけれど、例えば本のお礼にと果物屋お花をくれる姉さんに居心地良い場所を作れること。
自分たちが住む島をもっとちゃんと知ること。
本をたくさん読んでくれる子供たちの成長を見て、次の本を渡せるようにしておくこと。

 

島の内外から、男木島図書館を利用してくれるみんなへ。そして男木島図書館の活動を見守ってくれたり、協力してくれたり、スタッフをしてくれたりしているみんなへ。
少しずつですがここに図書館があり続けることの信頼を築いていけたらなと思っています。

 

今これを読んでくださっている皆さまのご多幸をお祈りしつつ。
年始に寄せて。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

特定非営利活動法人男木島図書館
理事長
額賀順子

 


男木島図書館では屋根の改修のためにクラウドファンディングに挑戦しています。よろしければこの場所の継続のために応援をお願いいたします。
雨に濡れる5000冊の本。瀬戸内海に浮かぶ男木島図書館を守りたい

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